1. 背景
2024年4月22日、KPOP業界ではまたしても大きな動揺がありました。ADOR(アドア)のミン・ヒジンCEOが、親会社であるHYBE(ハイブ) アドアからの独立を図ろうとした疑惑が持ち上がり、HYBE(ハイブ) による内部監査が開始されました。この監査は、ADOR(アドア)の経営陣が内部の重要な情報を外部に漏洩し、HYBE(ハイブ) の株式を売却しようとした疑いから始まりました。
HYBEとADORの関係
- ADOR(アドア)はHYBE(ハイブ) の子会社です。
- HYBE(ハイブ) はADOR(アドア)のようにいくつか独立した音楽レーベルを持っています。
- 代表的に、BTSを手掛けるBIGHIT MUSIC、NewJeansを手掛けるADOR、LE SSERAFIMを手掛けるソースミュージック、ILLITを手掛けるBELIFT LABなどがあります。
対立の火種
この問題の火種となったのは、ADOR(アドア)の新人ガールズグループ、NewJeansが自社のアーティストとして大成功を収め、その成功が原因で経営権争いが激化したことです。HYBE(ハイブ) は元々ADOR(アドア)の全株を保有していましたが、NewJeansの成功を受けてミン・ヒジンCEOに20%の株を譲渡しました。その結果、経営陣に緊張が生じ、HYBE(ハイブ) とADOR(アドア)の間で様々な衝突が発生しています。
2. 主要な出来事
2024年4月22日
ハイブとADOR(アドア)間で生じている対立は、ハイブがADOR(アドア)の経営陣が企業の秘密や重要な情報を不適切に外部に漏洩し、さらにハイブが保有するADORの株を売却させようとした疑いを捉えたことに始まります。この行動は、ADORの経営権を奪取し、ハイブからの独立を図る目的だとハイブ側は判断し、ミン・ヒジンCEOやシン・ドンフン副社長を含む経営陣に対する監査を開始しました。
ハイブの監査チームはADOR(アドア)のオフィスに赴き、会社の資産の回収と経営陣からの直接的な証言の確保を行ったことが報告されています。さらに、ミン・ヒジンCEOやシン・ドンフン副社長には、経営陣が関与したとされる経営権の奪取の企て、事業の秘密の漏洩、人事に関する不正な依頼などの内容を問う監査質問書が送付されました。
この事態に対し、ハイブはADOR(アドア)の株主総会の開催とミン・ヒジンCEOの辞任を要求しています。株主総会を開催するにはADOR(アドア)の取締役会の承認が必要ですが、現在はミン・ヒジンCEO派の人物が多数を占めているため、株主総会が開催されない場合、ハイブは裁判所に介入を求める可能性があると見られています。
また、この問題は別のHYBE(ハイブ) の子会社であるビリーフラボからデビューしたガールズグループILLITが、ADOR(アドア)のNewJeansのコンセプトやスタイルを模倣しているのではないかという疑惑からさらに悪化しました。ミン・ヒジンCEOはこの問題をHYBE(ハイブ) に正式に申し立てましたが、突然解任される動きがあったとし、経営権の奪取を企てたとの疑いに対しては否定しています。
2024年4月23日
ミン・ヒジン代表は、HYBE(ハイブ) が保有するADOR(アドア)の80%の株式を持っているため、自身が経営権を奪うことは不可能であると述べました。ミン代表はハイブの主張に疑問を投げかけ、「経営権を奪取するような無理なことはしない」と強調しました。また、もし金銭が目的であれば、このような内部告発や異議申し立てを行わなかったであろうとも述べています。
しかし、その一方でADOR(アドア)の内部文書が公開され、ハイブからの独立を計画していた内容が明らかになりました。文書には、経営計画や契約書の変更に関する詳細なシナリオが記載されており、外部投資家の誘致計画も含まれていました。これにより、ハイブはシンガポールの投資庁(GIC)やサウジアラビアの国家投資基金(PIF)が関与していると見ています。
この件に関連して、ミン代表は過去にADOR(アドア)のアーティストNewJeansが他のグループに模倣されたと主張しており、その中にはハイブの別のグループも含まれていると指摘しています。しかし、ミン代表が模倣問題についてハイブに提出した問題提起に対して、ハイブはすでに詳細な回答をしていたことが確認されています。
この内部文書の内容が明らかになったことで、ミン代表とハイブとの間の法的な争いがさらに激化することが予想されます。ミン代表はハイブが提案したストックオプションが不十分で税率が高いと問題視しており、その点についても両者の間で意見が分かれています。このような背景から、ADOR(アドア)とハイブの間の対立は解決が難しい状況にあります。
2024年4月24日
ADOR(アドア)の内部文書に「HYBE(ハイブ) の罪」というタイトルが付けられていたことがアジア経済の取材で明らかになりました。この文書を作成したA氏は、これが経営陣との議論なしに個人的な意見に過ぎないと主張しています。HYBEは、もしA氏が本当に内部の問題改善を目指していたのなら、理事会や監査委員会などの内部統制機関に問題を提起し、制度改善を待つべきだったと反論しています。
さらに、ADOR(アドア)が新人グループのILLIT、TWS、RIIZEがNewJeansを模倣したとする証拠を強化する目的で、これらのグループに関連する企画会社のスタッフをインタビューし、インターネットの掲示板での世論もモニタリングしていたことがHYBE(ハイブ) の内部監査チームからの情報で判明しました。
一方、ミン・ヒジン代表の私的な発言として「防弾少年団も私を模倣した」との発言が公になり、HYBE(ハイブ) の監査チームは、この発言の真偽を確かめるために情報収集を行っています。また、ミン代表は以前「プロデューサーのバン・シヒョクが私を模倣してBTSを作った」と何度も言及していたと報じられています。
HYBE(ハイブ) によると、ミン・ヒジン代表を含むADOR(アドア)の経営陣に対する監査が行われ、会社の情報資産の返却期限が設けられましたが、ミン代表はそのノートパソコンの返却を行わなかったことが伝えられています。通常、内部監査の対象者は、営業情報や事業上の秘密などを含む有形無形の資産を会社に返却する必要がありますが、ミン代表を除く他の経営陣は返却を完了しています。
また、NewJeansのファンダム「Bunnies」はミン・ヒジン代表に対するトラックデモを行い、HYBE(ハイブ) に対する支持を表明しています。デモのトラックには「BunniesはHYBE(ハイブ) 所属のNewJeansを支持する」「ミン・ヒジンはもうNewJeansや家族を利用するな」「ミン・ヒジンは他のアーティストの中傷を直ちに止めろ」というメッセージが掲示されています。
最後に、ADOR(アドア)はHYBE(ハイブ) との経営権争いに関連して公式な立場を表明する予定でしたが、法律代理人を通じてこれを撤回し、HYBE(ハイブ) の監査に関する質問に公式な回答を行わない方針を明らかにしました。しかし、監査質問に対する回答の締め切り日にほぼ間に合う形で回答書が提出されたことが報じられています。HYBE(ハイブ) は「回答書は受け取ったが、内容は公開できない」としています。
2024年4月25日
ハイブは、ミン・ヒジン代表が主導して経営権を奪取する計画を立てていた具体的な事実を確認し、その証拠も押さえたと発表しました。公開されたカカオトークの会話内容には、「ADORを空の殻にして連れて行く」とか「NewJeansの契約解除を議論した」という話が含まれていたとしています。これに基づき、ハイブはミン・ヒジンを業務上の背任の疑いで告発する意向を明らかにしました。また、ハイブのパク・ジウォン代表は「事件が一段落したため、アーティストの心理治療と感情的な安定を最優先にする」と述べました。
これに対して、ミン・ヒジン代表は25日の午後3時に緊急記者会見を開いて公式な立場を表明すると発表しました。ハイブはまた、ミン・ヒジン代表が親しい親族が接触したとされる女性占い師との長文の対話をフォレンジックを通じて確保し、人事や採用など重要な会社経営事項について占い師からのアドバイスを受けて行っていたと明らかにしました。ただし、25日の記者会見でミン代表は「占い師」という職業の知人に会っただけだと説明しました。
ミン・ヒジン代表の緊急記者会見では、2人の弁護士を伴い、25日の午後3時から約2時間にわたって開かれ、これまでに提起された疑惑に対しては根拠のない中傷であり、非常に不当であると訴えました。この過程で、ハイブ、SM、ソースミュージックなどのKpop業界に関連する多くの企業や人物、そしてNewJeans、LE SSERAFIM、aespa、ガールズフレンドなど多くのアイドルグループに関する未確認の話が多数出たため、大きな波紋が予想されます。
3. 争いのポイント
ニュージンスのコンセプト
ニュージンスのコンセプトは独創的だと評価されていますが、他のグループがニュージンスのコンセプトをまねてもよいのか、どこまでまねてよいのかについて、評論家やファンの間で様々な意見があります。コンセプトをまねすぎれば、K-POPの産業に悪影響を与えるおそれがあると指摘する声もあります。
経営権争い
現在、ハイブとニュージンスの両陣営が立場を示し、証拠を公開しており、今後法廷闘争になる可能性が高いと見られています。ミンヒジンの行動を問題視する意見もあれば、ハイブの経営手腕に疑問を投げかける声もあります。
ミンヒジンがハイブの支援を受けずに独立企業を立ち上げ、自らCEOとなり投資家を集めるべきだったという意見もあります。一方で、ハイブの他のアイドルやほかの事務所のアイドルをけなし、盗作を疑う発言は行き過ぎではないかという指摘もあります。
ハイブは防弾少年団の大成功により急成長しましたが、様々な問題対処能力や子会社経営能力の面で課題があり、この一件でその実態が明らかになったという評価もあります。
4. 事件の影響と市場への反応
この事件の余波により、ADOR(アドア)の親会社であるHYBE(ハイブ)の株価が当日7.8%急落しました。現在、防弾少年団がの兵役のため不在する中、ADOR(アドア)はハイブの次世代主力収益源とみなされており、このレーベルの成功にはミンヒジンの影響力が大きかったと評価されています。そのため、この対立が収束しない場合、以下のようなリスクが高まる可能性があります。
- ハイブとADOR(アドア)が分離した場合:ハイブの収益が悪化する恐れ
- ミンヒジン側が解雇された場合:ニュージンスの将来と成功が不確実になるリスク増大
- ミンヒジン側が残った場合:両陣営の対立が深まり、ハイブの影響力が低下する可能性
つまり、いずれの展開になっても、ハイブにとって好ましくない事態となる恐れがあり、株価下落の要因となったと考えられます。この事態の収拾が両者にとって重要な課題となっています。